一本目 初発刀(前)
意義
自分と敵とは1.5mの間隔を置いて対峙している。
敵の害意を察知するや、機先を制して敵の胸部またはこめかみに抜き付け、敵がのけぞるか、倒れようとするところを、真っ向正面から切り下ろして勝つ業。
動画
(永江又三郎先生)
制定一本目との違い、ポイント
最初のうちは、「この業って制定一本目(前)と何が違うのか?」というのが良く分からなかった。
今でも分からない部分はあるが、外見的にいくつか明らかに異なるポイントを上げてみよう。
抜く方向が違う。
制定は正中線の方向、古流は差しなり。差しなりの方が、相手に手で止められる心配がない、という理由を聞いた。ただしこれは先生によって指導が違う。制定で差しなりに抜いても良さそう。
鞘の返し方が違う
制定の場合は、最初から鞘を寝かして横に抜き始める。古流は、縦で抜き始め、刃先が10cmくらい残るところまで抜けた頃、徐々に刃を横外水平に向け、いわゆる切っ先三寸(約9cm)に達したとき、一気に抜く。
抜き付け時の姿勢
制定は、抜き付けた後に、体が斜めに開く。古流の場合は、正対している。
振りかぶりの方向
古流は肩口から振りかぶる。栄信流はそのままスッと上に上げる。制定では、その間を取って「耳の後ろ」ということになった。
振りかぶった角度
制定では、刀は45度より後ろに寝かさない。古流の場合はもう少し後ろまで振りかぶっても良い。
切り下ろす位置
制定では、水平よりやや下がり(小笠原礼法では水走りという)の角度までで止める。古流の場合は、地面すれすれまで切り下ろす。
納刀後の手
納刀後、右手を柄頭まで滑らしてから離す。この仕草の意味は、心で念仏を唱える、柄の様子を確かめている、など諸説あるが不明。この所作は以降全ての業で共通。
注意するポイントメモ
- 抜き付けの時、柄を自分の正中線に維持する間隔で。(柄で攻めるとたやすく止められてしまう。差しなりに攻めると押されたときに負けてしまう)
- 抜き始める前に、きちんと鯉口を切ること。
- 抜こう、抜こうとするあまり前屈みにならぬよう。上方向に立ち上がるべし。
- 窮屈なところを「ごめんなさいね」と通るように肩を落とし、脇を締める。
- そのまま前後に体を開く要領で、「突き」のように抜き付ける。
(平成23年11月20日)